[シンポジウムHP]

群馬大学 地域貢献シンポジウム & 社会情報学シンポジウム
「まちで本をひらき、本でまちをひらく
~本のまち前橋にむけて~」QA

シンポジウムの全体質疑では、たくさんの質問・意見が寄せられたのですが、時間の関係上、一部にしか返答できませんでした。 このページではその場で返答できなかった質問や意見に、後日、講演者が返答したものです。

音喜多氏のQA

音喜多氏から、八戸ブックセンターの企画事業報告書を提供いただきました。
八戸ブックセンタ 企画事業報告書 (令和2年度版)
八戸ブックセンタ 企画事業報告書 (令和3年度版)

No 質問・意見 返答
1 とってもワクワクしながらお話伺いました。必ず近いうちに八戸に行こうと思います!
(ご質問)
①開店当初には4000万円の赤字を見越しているという報道もあり、行政が赤字を負担することに対して批判もあったかと思いますが、どのように実現にこぎ着けたのですか? また、実際の収支状況はいかがですか? 6年間の運営成果を受けて、当初の批判の声は変化しましたか?
②お金を出して本を買える層という意味では、ある程度余裕のある大人が対象の施設だと想像したのですが、実際に訪れる人はどのような年代の、どのような方が多いのですか?
③6年間の「本のまちづくり」で八戸市がどんなまちに変わったか、音喜多さんの総括を伺いたいです!
①開館当初から毎年、6000万円程の公金を投入しています。(開館当初の報道には人件費が含まれていなかった。)これには、様々な意見をいただいていますが、今回のシンポジウムのように、全国各地からの関心を得ていることからも、いま必要である公共事業であり、運営事業費の見直しなどもしながら事業を継続しています。
②開館当初から、中高生以上の大人をメインターゲットにした施設づくりを行っています。来館者について、平日は高齢者層、休日は家族連れを含めた若い層が多いように感じます。また、観光目的の方も一定数来館されています。
③文化やスポーツなどの分野によるまちづくりには、効果が出るまで一定期間が必要と考えます。現在進行形だと思っていますが、八戸が「本のまち」であると言えるよう、様々な企画をしていきたいです。
聞くだけと実際に見るのとでは、感じ方が全く違ってくると思います。是非、八戸にお越しください!
2 小学生一人一人に対して、図書カードを配布する活動がとてもいい活動だと思いました。なぜなら、自分で選んで、買って読んだ本の内容はとても印象に残り、小学生にとって良い経験となり本が好きになる人が増えると思ったからです。本を通して八戸市を盛り上げようとする熱い想いが伝わったので、いつか八戸市に行ってみたいと思いました。 (自分もですが)小さい頃の体験は大人になってから絶対に役立つと思っています。子どもから大人まで全ての方が本好きになることを目指して取り組んでいますので、是非、八戸にお越しください!
3 本を配るのではなく、クーポンを配って子供に本を選ばせるということは自分が好きな本を自分で選んでいるので、本に対する興味が湧くきっかけになると思いました。また、書店での立ち読み、座り読みを推奨しているということにとても驚きました。さらに、ドリンクスタンドという活動がとても面白いと思いました。図書館は基本的に飲食禁止の場合が多く、リラックスして本を読むことができないことが多いので、この活動はとてもいいなと思いました。また、読むだけではなくて、書くということも推奨しているということも本当の本のまちに近づくのではないかと思いました。音喜多さんの話を聞いて、人とのつながりによって本に興味を持ってもらいたいという考えがとてもいいなと思いました。 読書感想文などで強制的に本を読ませられるのではなく、自分で本を選ぶという体験は絶対に必要だと思っています。それがきっかけで本を好きになり、ブックセンターのような特徴ある書店、図書館などにも足を運ぶようになれば、もっと言うと作家を目指すようになれば、これ以上ない効果だと思っています。そして、今回のシンポジウムをきっかけに、本に関する取り組みをしている方々ともつながりを持っていただけると嬉しいです。
4 執筆活動ができる場所ができているのは本の街にするうえで面白いと思いました。 「読む人を増やすには、書く人も増やさなければ!」ということで取り組んでいます。八戸市外の方でも登録できますので、宜しければ是非!
5 利益率が低下する書店の建築に協力してくれるものの人数は? インターネットが普及するなどしてから、書店流通制度上の課題でもありますが、書店だけでは経営が難しいという意見もあります。これを解決できるような仕組みをつくることも今後の課題かなと感じています。
6 八戸市の企画を受けた人々の具体的な声はどんなものがあったのか。 これまでの八戸市(地方都市)では実施できないでいた企画(作家・編集者・デザイナーなどのトーク等)を数多く実施してきました。参加者からのアンケートでは、貴重な体験が出来たといった声をいただいており、ゲストやイベント内容に関する希望などもいただくなど、関心度は高いと感じています。
7 八戸市のイベントや施設の中で本のまちづくりが行われていることに驚いた 本の活用は教育面だけではなく、まちづくりとしての活用も可能であるということを実現したく、様々な企画をたてています。このことか当たり前となることが理想です。
8 八戸ブックセンターは、一日にどれ程の人が来るのか、また、来る方の年齢層を教えて欲しいです。 開館前の計画では、1日平均300人の来館者数を目指していました。コロナの影響が出る前までは1日平均300~400人の来館者数で、現在は300人を下回っている状況です。来館者の年齢層について、中高生以上をメインターゲットにしていることもあり、高齢者層が多いですが、休日などは家族連れも含めた若い層の来館もあります。
9 ブックセンターの理想と現実(予算など)での悩みは? (どの業種でも同様かと思いますが)予算を使って様々な企画を行って効果を出すということが理想ですが、最小限の予算で最大限の効果が出るよう、日々企画を練っているという状況です。
10 八戸ブックセンターにおいては,図書館との連携,司書の活用のような取り組みはないのでしょうか 図書館とは、お互いの企画のほか、司書とも連携した取り組みを行っています。(展示企画の連携、ブックフェスなどイベントでの連携、司書と一緒に小学校を訪問してのトークイベント など)
11 民間書店勤務経験者の雇用があるとのことですが、八戸ブックセンターで働いている方はほぼ公務員なのでしょうか?割合が知りたいです。また収益は八戸市の収入になるのでしょうか? 当センターのスタッフは、一般行政職員3名、会計年度任用職員(民間書店勤務経験者)4名の計7名で、全て地方公務員です。この他、本の仕入やレジ業務などを地元民間書店で組織している組合に業務委託しており、この組合のスタッフが4名います。本などの売り上げは八戸市の収入になります。
12 国内ですでに本を用いたまつづくりを実践している都市があることに驚いた。 このような形なら、本から離れがちな自分もまた読みに行きたいなと思える気がした。 スタートしたばかりで、効果が出るのはもう少し時間が必要かもしれませんが、多くの人がそのように思っていただけるよう事業を進めていきたいです。
13 子どもたちが本に触れる機会を増やそうとはよく言われるが、各家庭にすべてを委ねられては家庭環境などによって無理があるケースも存在するだろう。そのため、市が主となってそれを推進する取り組みは重要に感じた。私自身は昔から本が好きだったので八戸の子どもたちを羨ましくさえ思う。また、本を読む側のみならず作る側にも注目した視点が素敵だと思った。 今の子どもたちの親世代が既に本離れしているので、子どもたちが本に触れるきっかけをつくることは簡単ではないと思っています。八戸の取り組みでは、親御さんを始めとした方からの評判は良く、今後も可能な限り継続していきたいと考えています。
15 人に本に興味をもってもらうためには、特徴や魅力のある施設や企画を考える必要があるのだと思った。 本離れが進んでいるなか、八戸のように行政が主導した取り組みは今後も増えてくると思います。他の自治体を参考にしながら、新たな取り組みを考えていきたいと思っています。
16 「本との偶然の出会い」を創出するために陳列を工夫しているという話がありましたが、具体的にはどういった工夫がされているのですか? 著者や出版社、ジャンルなどを基にした本を探しやすい並べ方ではなく、一つ一つの棚に「テーマ」を設定し、そのテーマに沿った本をジャンルを問わずに並べています。お客さんには、気になるテーマや1冊の本を見つけてもらえると、それに関連する本が周りにもあるというかたちを基本にしています。
17 図書館で本を購入できたり、書店で気軽に立ち読みできたりすればいいとずっと思ってはいたけれど、実際には実現していないものが多い気がした。立ち読みは基本的に良くないことだと見られがちだが、そこを逆手にとって行政と民間がより過ごしやすい公共施設を作れるのが理想だと思った。 書店経営が厳しいと言われている中ですので、これまでにない取り組みを考えていく必要があると思っています。より良い効果が出るよう、更なる発展を目指していきたいと思います。
18 本を手に取ってもらうために体験型の取り組みをしていることが印象に残りました。 特に若い頃の体験というのは、成長してから絶対に役立つと考えています。可能な限り、特別な体験ができるよう今後も企画していきたいと考えています。
19 子供たちに「本を自分で選ばせる」方策はかなり効果的だと感じました。自分が読みたい本を読み「本は面白いものだ」と知ってもらうことが、読書の習慣を根付かせる一番の近道ではないかと私も思います。 既に読書の習慣が身についている人に対しても、未知のジャンルと出会う機会を設けているのも、「自分のスタイルが確立されるとかえって新しいことをしなくなる」点に着目していて興味深いと思いました。 今の子どもたちの親世代が既に本離れしているので、子どもたちが本に触れるきっかけをつくることは簡単ではないと思っています。読書感想文のように読書を強制されるのではなく、本を好きになってもらえるように考えた取り組みです。今後も可能な限り継続し、新しい取り組みも考えていきたいです。
20 本を読むようになったきっかけ、もしくは人生で影響を受けた本があれば知りたいです。 ブックセンターで仕事をすることになり、どうしても仕事として読むことが多くなってしまっていますが、オープンから6年経つ中で「この本が!」というよりは、本が出来るまで(執筆・編集・装丁・印刷など)に携わる人がたくさんいて、それぞれの思いが詰まっているということに対して自分の中での影響(?)を受けたと思っています。
21 「本との偶然の出会い」の響きがとても魅力的でした。音喜多さんはどんな本と偶然の出会いをされましたか。 (私は「本との偶然の出会い」を創出する側になるので、お客さんのお話になりますが)ブックセンターは棚に「テーマ」を設定して並べています。「音楽」や「世界」といったもののほか、「みつめる」や「かんがえる」といった抽象的なことばを埋め込んだ棚もあり、その他、時期に合わせたイベント、展示企画に合わせた棚など、多岐に渡ります。これらのテーマで気になる棚に目が行き、そこから「こんな本があるんだ!」といった「出会い」に繋がっていると思っています。
22 「本を借りるのではなく、買って自分のものにして読んでほしい。」というようなお話があったが、私もこの意見に賛成する。確かに、お金はかかってしまうが、私有することで、その本に愛着がわくし、いつでも読み返せるからである。 本を私有することにより、極端な話として、その本を読まずに本棚に入れておくだけでも、背表紙を見ることにより、購入したときの思い出は感じられると思います。このようなかたちでも、本に愛着がわき、将来に繋がるのでは感じています。
23 市や教育機関が主導することで、まち全体が活気づくと思う。 民間でなければ出来ないこと、行政や教育機関でなければ出来ないこと、それぞれあると思います。全国の自治体で様々連携した取り組みが進められていますが、今後もそれらを推し進めていく必要があると考えています。